反省

私たち外科医は常に合併症のない安全な手術を心がけていますが、患者さんにメスを入れさせてもらう行為にはどうしても合併症が起こり得ます。

鼠径ヘルニア手術は、胃癌、大腸癌などの手術に比べ合併症は少ないのですが、100%安全で大丈夫とはいえません。

当院では鼠径ヘルニア患者さんにパンフレットを見せながら病気のこと、手術のこと、そして術後合併症についてお話しします。

当ホームページでも公開しています(手術に伴う合併症)。

鼠径ヘルニア手術に起こりえる合併症は

・漿液腫(鼠径部の水の貯留)

・出血

・メッシュ感染

・再発

などがあります。一番多いのは漿液腫(鼠径部の水の貯留)なのですが、これは自然によくなるのでそれほど心配はありません。

 

先日の症例で、今まで経験のない合併症を経験いたしました。

臍部(へそぶ)の傷から体内の脂肪の一部(大網といいます)が脱出していたのです。

いつものように術翌日に退院されました。退院翌日、患者さんが臍(へそ)から何か出ているとのことで来院されました。大網が出ているのが一目瞭然でした。

すぐに事情を説明し局所麻酔下に余分な脂肪を切除し再縫合いたしました。

念のため一泊入院して頂き翌日、問題ないことを確認し退院して頂きました。再手術後、約1週間して外来に来て頂きましたが、臍の傷、鼠径部とも問題ありませんでした。

ただ今後も注意深く経過観察していきます。

通常、臍部は5mmの傷ですので皮膚のみ2~3針しか合わせません。10mmの傷であれば皮膚の下の層の筋膜という丈夫な組織も縫い合わせるのですが(筋膜と皮膚の計2層)。

私自身、今まで5mmの傷からお腹の中の一部が脱出したことがなかったので本当に予想外の合併症でした。ただ学会報告などでは5mmの傷に腸がはまり込んで緊急手術になったという症例も聞いたことがあります。しかしあくまでも報告レベルだと認識しておりました。

この患者さんに関して振り返ってみると

・この患者さんは術後に麻酔の影響がのこり吐き気や嘔吐が数回あったこと(お腹に力が入ってしまったこと)

・以前に臍を利用した腹腔鏡手術を経験したことがあったこと

など、今思えば、臍部の傷により注意を払わなければならない点がありました。

患者さんやご家族にも不安を与えてしまう結果となり猛省しております。

今後はこのような合併症が起きないよう、細心の注意を払い手術に臨もうと思います。

 

(この経過の掲載に関しては患者さんの承諾を頂いております)

 

 

 

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